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ばるんが vol.07.

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    ーその少女の兄の様に、戦争が終わっても帰ってこない青年は、主人公達の暮らす村にも何人もいた。帰りを待ちわびる人々や、もう既に帰ってこないと解ってしまった家族は哀しみの日々を送るが、そんなものは時が解決してくれる。なんせ、みんな生きていかなきゃならないからな。
    ーまだ、その村はましな方だった。
    ー略奪、搾取、強姦、殺戮、横領、隠蔽...。
    ー戦時下の生活も大変なものだったが、まだ、少なくともそこには己の政府が存在していたから、最低限の秩序と治安は守られていた。しかし、占領下は違う。占領軍のお仕着せの治安や行政は、誰も従おうとしないし、そもそも占領軍自体が最低の軍隊だった。多くの犯罪は、占領軍自らがなんらかの形でその原因に関与していたという話だ。
    ーでも、まだ、その村はましな方だった。軍事施設があるとは言え、そこは新米少年兵の為の飛行場、軍事的価値も経済的な基盤も殆どない長閑な村だったからね。無能な将校に率いられた100人あまりの小部隊が駐留しているだけだった。
    ーまぁ、つまり、戦争中も戦後占領下も忘れられた、時代に取り残された貧しい村。そこがその映画の舞台さ。
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    るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 01:27 * comments(0) * trackbacks(0) * -

    ばるんが vol.06.

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      なぜあの時、わたしは再び図書館へと彼を誘ったのか、今となってはとっくの昔。その時のわたしの心の動きを想い起こす事は出来ない。
      青空に浮かぶ「くろくて、きょだいな、ふていけいの、ぶよぶよとした」そいつを捜しに行くのならば、あの夜明けの新宿でも良かった筈だ。
      きっと、わたしはばるんがは捜してはいなかった。わたしは、ここに連れて来た彼の心の動きを捜し出そうとしていたのだろう。それが図書館で見つかるとは想ってはいない。忘れ物を想い出す為には、忘れ物に気がついたその場所に戻る必要がある、そんなつまらない思いつきからだろう。
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      るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 01:50 * comments(0) * trackbacks(0) * -

      ばるんが vol.05.

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        「まぁ、冗談はさておき。キミの彼氏の観たものは、”大空への畏怖”ぢゃあないのかな?」
        「おおぞらへのいふ?」と、Sさんが発した言葉を漢字変換できないわたしは、かろうじてひらがなで発音する。

        「青く晴れ上がった空、それを駆け抜ける白い雲。季節は、そうだな、春の終わりから初夏にかけて。それは、誰だって好きだろう?」Sさんの腕が言葉以上に雄弁に語り出す。ノッて来た証拠だ。
        わたしは、その問いかけの内容以上に、Sさんがこの話に興味を持ってくれたのが嬉しい。おおきな声で肯定する。
        「だが、その青空は微妙な均衡で保たれていて、いつなんどき大きな黒雲が沸き起こり、白い稲妻が大地を引き裂いたり、紅い雨が私達の身体に打ち突けるかもしれない。そんな恐怖が常にあの青空にはあるんだ」
        「わたし、そんなややこしい感情で、青空なんか観た事ないよ」っと酷くマトモな正論をわたしが吐くと、
        「まぁ、もうすこし、わたしの話を聴きなさい」
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        るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 17:39 * comments(2) * trackbacks(0) * -

        ばるんが vol.04.

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          季節はめぐって、あの気狂いぢみた暑さはウソの様にひいやりとした空気が街を支配している。でも、ちょっとここでは時計の針を逆廻し。あの日の暑さを思い出せるように。

          10日間続いた曇り空もやっと幕引き。久しぶりに朝日が登るのを待つ。新宿の高層ビルの一角で、乱反射している、その光を和らげる様に淡い朝露が路面を濡らす。

          信号が変わる。和やかな空気が次第次第に殺気立ってくる。日常が否応なく押し寄せてくる。でも、ちょっとここでは時計の針を逆廻し。あの日のあなたを思い出せるように。
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          るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 18:29 * comments(0) * trackbacks(0) * -

          ばるんが vol.03.

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            で、キミにはそいつがみえたのか?」
            と、真顔で尋ねられたら、真剣に答えるしかない、わたしは思いっきり首を横に大きく降る。
            「まぁ、そうだろうな。もし、見えたらユング正しかった事になる。なぁ、マスター?」
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            るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 02:20 * comments(0) * trackbacks(0) * -

            ばるんが vol.02.

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              これまでのお話



              あの日もこんな日だった。梅雨入り直前の真夏日。莫迦の一つ覚えみたいな挨拶から始まる朝。
              「今日は暑いですね」「今日は暑いですね」「今日は暑いですね」「もう夏ですね」「今日は暑いですね」「こんまま夏になっちゃうといいですね」「もう夏ですね」「今日は暑いですね」「今日は暑いですね」......
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              るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 23:53 * comments(0) * trackbacks(0) * -

              ばるんが vol.01.

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                新宿西口を出てまっすぐに、都庁方面へと足早に向かい出す。
                動く歩道の上を軽くバウンドしながら、走ってみる。
                初夏の様な強い陽射しを浴びながら、跳んで行く。
                強いビル風に難儀しながら俯き加減で高層ビル街を抜け出すと、
                やぁ、もう桜の花が満開だ。
                眼前に、ぽっかりと蒼い空間が広がる。
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                るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 14:47 * comments(0) * trackbacks(0) * -
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