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ばるんが vol.05.

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    「まぁ、冗談はさておき。キミの彼氏の観たものは、”大空への畏怖”ぢゃあないのかな?」
    「おおぞらへのいふ?」と、Sさんが発した言葉を漢字変換できないわたしは、かろうじてひらがなで発音する。

    「青く晴れ上がった空、それを駆け抜ける白い雲。季節は、そうだな、春の終わりから初夏にかけて。それは、誰だって好きだろう?」Sさんの腕が言葉以上に雄弁に語り出す。ノッて来た証拠だ。
    わたしは、その問いかけの内容以上に、Sさんがこの話に興味を持ってくれたのが嬉しい。おおきな声で肯定する。
    「だが、その青空は微妙な均衡で保たれていて、いつなんどき大きな黒雲が沸き起こり、白い稲妻が大地を引き裂いたり、紅い雨が私達の身体に打ち突けるかもしれない。そんな恐怖が常にあの青空にはあるんだ」
    「わたし、そんなややこしい感情で、青空なんか観た事ないよ」っと酷くマトモな正論をわたしが吐くと、
    「まぁ、もうすこし、わたしの話を聴きなさい」
    ここでSさんは昔観たと言う映画を語り出す。
    ?これから話すのは、大空への夢にとりつかれた少年と彼に恋いこがれる少女のお話。
    「甘いラブストーリー?」とわたしは尋ねる。そんなわたしの無邪気な問いを無視して、Sさんは続ける。
    ?時代は、いつとも知れぬ架空の歴史。長い長い大戦争が終結して、兵士は両親と恋人の待つ故郷へと向かう。そして、故郷に辿り着いたものを迎える喜びの声と辿り着けなかったもの達への悲しみの涙が流されたそんな頃のお話。
    ?その少年と少女は、飛行場のある小さな田舎町で育った。飛行場といっても少年飛行士を育てるための訓練所だから軍事的価値は殆どない。戦争中とは言えその田舎町は静かなもんだ。青い空を旧式の複葉機がぷんぷん飛ぶ。
    「ぷんぷん? Sさん擬音、ヘタね」
    「馬鹿言っちゃあ、いけない。ホントにそんな可愛らしい音しかしないんだ。離着陸の際にエンジンをふかすだけで、飛行中はグライダーみたいに、空を滑空するんだ。訓練機だからな。田舎町の人々は、その訓練機をぷんぷん号って呼んでいるんだ」
    ?その田舎町は、昼間はぷんぷん号のエンジン音。夜はその飛行場の消灯時間までのほんの短い時間、少年飛行士の遊び騒ぐ声しか響かないという、そんなちっぽけなのどかなところだった。
    ?そんなところで育った主人公の少年の夢は、当然の様に、少年飛行士になってぷんぷん号を乗りこなして、ゆくゆくは立派な飛行士になって戦争に行くことだった。
    「そして、少女はお嫁さんね?立派な飛行士の可愛いお嫁さん」「最初はな、最初は」
    ?少女には、齢の離れた兄が一人いて、彼は志願して戦争に行くんだ。残念ながら彼は歩兵だったけれどもね。そして、戦争が終わった時には、帰ってこなかったんだ。
    「あれ、このあいだの話では半身不髄でしたね?」と、突然、マスターが斬り込んで来た。
    そして、こっそりわたしに早口で耳打ち「この話、長いよ〜。約束あるなら、早めに抜け出さないと。もっとも、今夜のSさん、どうせ、べろべろになるから、どっちにしても、最後までいなくても大丈夫。」
    わたしはちいさく頷いた。

    それからのお話
    ばるんが vol.06.
    るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 17:39 * comments(2) * trackbacks(0) * -

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      comments

      >オラチさん

      お褒めに預かり光栄です。オラチさんのアバターくんパフォーマンスって、わたしにはとても真似できません。
      ところで、今回書いてみて、気づいたこと。会話体って、物語を書くのに、すごく便利ってこと。
      Comment by るい @ 2005/11/18 5:53 AM
      こうゆう文章いいなぁ〜φ(.. )メモしとこ…
      カキカキ  るいサンやから、書けるのかも?俺には、無理やな…(;・・)
      Comment by オラチ @ 2005/11/18 3:42 AM
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