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『ローカル線(路面電車)』 by ポール・デルヴォー

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    下弦の月/ Waning Crescent Moonの淡い夜の闇に、ひとけのない舗道が浮かび上がる。ゆるやかなカーヴを描いて丘陵へと続くその路に沿って、ローカル線 / Local Trainの軌道が並走している。そこに2両連結の路面電車 / Tramが1台、全くの無音の侭に、そこにある。
    今、その丘陵を下ってきたのだろうか、それとも、これから上っていくのだろうか。その存在は確たるモノの、行き先も路線名も、確かなモノは一切ない。
    煌煌と照らし出されている車内であるのにも関わらず、そこに乗る乗客も乗務員も、一切、その気配はないのだ。
    あたかも、夜の闇が永遠に支配する様に、その路面電車 / Tramも永遠にそこにあるかの様だ。


    作品名:ローカル線(路面電車)
        Le vicinal
    画 家:ポール・デルヴォー
        Paul Delvaux
    美術館:個人蔵
        Private Collection


    ポール・デルヴォー / Paul Delvauxという画家を知るモノにとっては、いささか、異色な作品に観えるのではないか、と想います。

    画家の作品に特徴的な、長い長い回廊もなければ、そこを彷徨い佇む女性達の姿さえも、この作品にはありません。
    その代わりにあるのは、見晴らしのよいゆったりとした丘陵と、2両連結の、路面電車 / Tramなのです。

    画家の一連の作品では、確かに、路面電車 / Tramが重要なモチーフを担っています。このブログでこれまで紹介してきた幾つもの作品にも、路面電車 / Tramは登場しています。
    民衆の声 / La voix publique』(記事はこちら)や『エフェソスのランデヴー / Le rendez-vous d'Ephese』(記事はこちら)です。
    だけれども、それはあくまでも、画家の作品の背景を彩る一部としての役割の様に観えます。その作品に描かれている舞台がどの様な場所であるのか、その書割りの一部を成しているかの様に、わたし達は観てきたと思います。作品の主役は、そこに登場する幾人もの美しい女性達(しかもそのうちの幾人かは素敵な裸身を曝してくれています)であるかと。

    だから、この作品を観ると、一種異様なモノを観てしまったかの様な心持ちになって吃驚してしまうかもしれません。
    それは、これまでにわたし達が観てきた画家の作品が、実際にはない光景、現実には存在し得ない風景、まるで夢の中の出来事の様に、その作品群を観てきたからでしょう。
    だけれども、この作品を観てしまうと、これまでのそんな認識がぐらりと揺らいでしまいます。
    あたかも、これまでの画家の作品が、実は堅牢な、実際に存在している、現実の光景ではないのだろうかと、そんな覚束ない想いに囚われ出すのです。

    でも。
    そう、でも。

    この路面電車 / Tramの佇まいを観ていると、それとは全く異なる感慨も、わたしには産まれるのです。
    もしかしたら、あの女性達の化身した姿が、この路面電車 / Tramかもしれない、と。
    それ程に、この路面電車 / Tramとあの女性達は、とってもよく似ているのです。

    下に掲載するのはポール・デルヴォー / Paul Delvauxの『ローカル線(路面電車) / Le vicinal』が描かれた1959年に発表された作品、リタ・ヴァルネレ / Rita Valnere(日本語表記はこれで正しいのでしょうか?)の『電車に乗って / In The Tram』(邦題はわたしが訳しました)です。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 07:03 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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