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『アングルのヴァイオリン』 by マン・レイ

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    一見、奇を衒った作品にしか観えないが、それを乗り越えて説得力は抜群なのだ。
    誰だって、納得せざるを得ないだろう。
    御丁寧に"f"の文字をふたつも並ばせれば、文句の立てようもない。
    もう、こう断言せざるを得ないのだ。
    おんなの背中はまるでヴァイオリン / Violinだ、と。


    作品名:アングルのヴァイオリン
        Violon d'Ingres
    画 家:マン・レイ
        Man Ray
    美術館:ゲティ・センターアメリカ合衆国ロサンゼルス
        
    The J. Paul Getty Museum, Los Angeles, The United States Of America

    人を喰った様な作品です。
    説明のしようもありません。

    でも、ふと立ち止まってしげしげと凝視めると、疑問がひとつ湧き上がります。
    いいえ、作品からではありません。凝視めるべきは作品名、『アングルのヴァイオリン / Violon d'Ingres』と謂う言葉です。

    「ヴァイオリン / Violon」は解ります。モデルとなったキキ・ド・モンパルナスことアリス・プラン / Alice Prin aka Kiki de Montparnasseの、背中が描くふたつの曲線と無邪気に描かれたふたつのf字孔 / f-holeは、誰が観てもヴァイオリン / Violinです。
    ヴィオラ / Violaとかチェロ / Celloとか、はたまたコントラバス / Contrabassとか、そんなつまらない冗談を飛ばすヒトは、嫌いです。

    疑問が湧くのは、「アングル / Ingres」の方です。

    でも、これも辿れば画家ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル / Jean - Auguste - Dominique Ingresの事であり、彼には後ろ姿の女性の裸を描いた作品『ヴァルパンソンの浴女 / La Baigneuse dite de Valpincon』(こちらで紹介済み)がある事が解ります。ルーブル美術館 / Musee du Louvre所蔵作品です。
    だから、マン・レイ / Man Rayはその作品を念頭に置いて、この作品を命名したのだな、と納得する事が出来ます。

    だが、それだけが結論ではないのです。
    アングルのヴァイオリン / Violon d'Ingres」と謂う語句は、この作品を指すのとは別に、もうひとつの意味があるのです。

    ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル / Jean - Auguste - Dominique Ingresと謂う画家は画業の他に、ヴァイオリン / Violin演奏にも秀でていて「アングルのヴァイオリン / Violon d'Ingres」と謂えば、本職以外の余技、特技、趣味 / Grande passion dans laquelle on excelle et qu'on pratique en dehors de son activité principaleを指す言葉なのです。

    だが、それをもってこの作品に向かうと一体、どんな解釈が可能なのでしょうか。

    マン・レイ / Man Rayのこの作品自体が趣味の産物と解する事も出来るでしょうし、モデルのキキ・ド・モンパルナスことアリス・プラン / Alice Prin aka Kiki de Montparnasseがこんな風に撮影される事が趣味的な行為とも解釈出来るでしょうし、マン・レイ / Man Ray自身のキキへの眼差しそのものが(本気ではない)遊びだよ、とも理解可能なのです。

    だから、作品だけを眺めれば、まるで冗談かなにかの産物にしか観えないモノも、この題名のあるおかげで、非常にセクシャルな様相をも獲得しそうなのです。

    尤も、これはわたしが日本語 / Japaneseに翻訳された言葉でもって、想像を巡らしているからであって、ネイティヴに仏語 / Frenchを解するヒトからみれば、全くもって、違うニュアンスがあるのかもしれません(例えば、発話してみれば全然、違う意味をもった語句に変換可能なのかもしれない)。

    下に掲載するのは、上の作品と同じ画題(なのか?)の、ジョージ・ベローズ / George Bellowsによる『ヴァイオリニスト・レイラ・カルマン / The Violinist Leila Kalman』。
    マン・レイ / Man Rayの『アングルのヴァイオリン / Violon d'Ingres』と同じ年、1924年に制作されました。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 09:45 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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