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『死と乙女』 by エゴン・シーレ

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    ふたりの男女がいる。そして、いずれが死 / Todでいずれが乙女 / Madchenかと問われれば、描かれているその性差で一目瞭然だ。
    だが、と思う。
    左側の人物の肘で半ば隠れているが為に、異様に細く長くみえる彼女の腕の不気味さは、まるで彼女自身がまるで死 / Todそのものであるかの様なのだ。
    そして、そんな彼女に抱かれた彼は、死 / Todである彼女からみるみる精気を奪われて干からびて死んでしまいそうにみえてしまう。


    作品名:死と乙女
        Tod und Madchen
    画 家:エゴン・シーレ
        Egon Schiele
    美術館:オーストリア・ギャラリーオーストリアウィーン
        Osterreichische Galerie Belvedere, Wien, Austria


    『死と乙女 / Tod und Madchen』と謂う画題は、『死を想え / メメント・モリ / Memento mori』と謂う表現の、代表的なモノだと思います。
    死 / Todと対極の存在として、美や若さや生を具現化した存在としての乙女 / Madchenを配置したモノで、下に掲載するハンス・バルドゥング・グリーン / Hans Baldung Grienの『死と乙女 / Der Tod und das Madchen』の様に、死 / Todが乙女 / Madchenを陵辱する構図を採るモノが殆どです。その結果、美や若さや生が、死を前にすれば常に、儚いモノや危ういモノとしてみえざるを得ない。
    正に『死を想え / メメント・モリ / Memento mori』の思想が如実に顕れてくるのです。

    ここに紹介した本作品も、そんな『死を想え / メメント・モリ / Memento mori』の系譜上にある『死と乙女 / Tod und Madchen』と謂う画題に倣った作品ではあるのでしょうが、乙女 / Madchenのとる態度が伝統的なそれとは、真っ向から対立している様に思えます。

    むしろ、彼女が死 / Todを陵辱しようとしている様にみえるのです。

    いや、違う。

    乙女 / Madchenに抱かれている人物は、死 / Todではないのかもしれない。

    『死と乙女 / Tod und Madchen』と謂う画題を観れば、乙女 / Madchenのすぐ側に常に、死 / Todが存在しています。ならば、他者から観れば、乙女 / Madchenと死 / Todは同化した存在と謂ってもいいのかもしれません。

    死 / Todは乙女 / Madchenと一体化し、この人物を亡き者としようとしている、そんな解釈の可能性はないのでしょうか。

    と、なるとここに描かれているのは乙女 / Madchen即ち死 / Todにとり憑かれたひとりのおとこの姿と謂えるのかもしれません。

    本作品のモデルとなったのは、ヴァリ・ノイツェル / Valerie "Wally" Neuzilこちらで簡単に紹介しています)。
    そうやって観ると、この乙女 / Madchenすなわち死 / Todにとり憑かれたおとこは画家自身の肖像と謂う事になるのかもしれません。

    しかし、『ユリイカ 臨時増刊 総特集 禁断のエロティシズム』というムックに掲載された『エゴン・シーレ エロスの断層線』(著:水沢勉 / Tsutomu Mizusawa)によれば、本作品は当初、乙女 / Madchenの衣服の臀部が四角く切り取られ、生身の臀がまるみえだったとの事(よくみると、四角い縁取りを確認できます)。

    ああ、もしかしたら乙女 / Madchenは、おとこに抱きつくと同時に、わたし達にはみえない死 / Todに、おのれの臀を犯されているのかもしれません。
    そしてそれによって初めて、この作品の画題が『死と乙女 / Tod und Madchen』の伝統に則ったモノと謂えるのではないでしょうか。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 11:23 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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