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ばるんが vol.03.

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    で、キミにはそいつがみえたのか?」
    と、真顔で尋ねられたら、真剣に答えるしかない、わたしは思いっきり首を横に大きく降る。
    「まぁ、そうだろうな。もし、見えたらユング正しかった事になる。なぁ、マスター?」
    この店に出入りする様になってから、もうずいぶんになる。電車にゆられてハチ公口に吐き出され、その勢いでそのまま日常を引き摺って、もうひとつの日常に身を投じるのは、さすがにしんどい。深夜のイベントに行く前にちょっと一呼吸置きたくなる、そんな時や、トモダチとのばか騒ぎに飽きた時にこっそり抜け出す、そんな時には、わたしはいつもここにいた。
    わたしの横にいるのはSさん。あの朝のばるんがの話に面喰らったわたしは、己の中で消化不良を起こして、つい彼にはなしちゃったんだよ。
    Sさんとは、この店でしか会った事はないけれども、わたしがここに入り浸るきっかけをつくったのも、このSさんだ。わたしのトモダチ関係とはなんの接点もないから、そのストレスをこっそり吐き出すにはちょうどよい。だから、ときどきそんなことやあんなことを聴いてもらってるんだ。

    マスターは小首をかしげて笑っている。きっと、ユングどうのこうのは、いつものSさんお得意の、口から出たでまかせなんだろう。

    UFOを引っ張り出して来たユングも嘘っぱちだけれども、フロイトもたかが知れているからな。結局おち*ち*で全てを説明しようってんだから、やつの場合はさ」
    でまかせって解り切っている話を聴くのは、いつも楽しい。話している方が無邪気に空想の翼を広げているんだから、聴き手は風になってその飛行を気の向くままコントロールしてあげればいい。
    アルバトロスの滑空も、イカロスの墜落もわたし次第ってわけ。

    「しょせん、心理学なんてものは、学って名乗ってるクセに、でまかせみたいなもんなんだぜ。ヒトサマにオレサマの事が解かってたまるかって。でも、バルンガか、懐かしいな。最期は太陽になっちゃうんだっけ?」
    「Sさんもばるんがを観た事があるの?」
    懐かしい?-この言葉に驚いてわたしは、すっとんきょうな質問をしてしまったようだ。嘲る様にSさんが喋り出す。
    「観た事があるもないも、オレ達の世代みんな観ているはずだぜ。キミは幾つだっけ?」

    そこではじめてわたしはばるんがというものが、昔のSF-TV番組に出たカイジュウの名前の事だと知った。そのカイジュウは、他のカイジュウとちがってただぷかぷかと浮かんでいるだけで、東京の都市機能を壊滅させた事やありとあらゆるエネルギーを吸収して大きくなる事や太陽の大きなエネルギーを求めて宇宙に去った事などを、Sさんに教えてもらった。

    「俺は、ばるんがじゃあなくてゼノンが姿を現すと信じていたんだけれどもな。21世紀が来る前に、ゼノンが降臨して人類を全滅させるとばかり思っていたよ。まさかこうやって新しいミレニアムを迎えられるとは思わなかったぜ。なぁ、マスター?」
    21世紀来年からですよ、Sさん。2000年は、20世紀最期の年。」

    わたしにとって、謎の言葉がまたひとつ降臨した。





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