<< September 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 短歌:梅雨ノ夜ニ詠メル | main | 詩『敵意:Aggression』 >>

『麗しきイゾルデ(王妃グィネヴィア)』 by ウィリアム・モリス

0
    白と赤を基調とした画面の中は、いささか雑然と調度品が散見される。そこにひとり、佇む女性。
    彼女の装いもまた、白と赤。
    ながくのびたくびの先にある美しいかんばせはうつむき、なにを想っているのだろうか。
    来しかた、行くすえ、愛するひと、そしてそれをはばむいくつもの障害、事情。
    だから彼女は佇む、じっと。


    作品名:麗しきイゾルデ(王妃グィネヴィア)
        La Belle Iseult (Queen Guenevere)
    画 家:ウィリアム・モリス
        William Morris
    美術館:テート・ギャラリーイギリスロンドン
        Tate Gallery, London, England


    1858年の作品。

    どういうわけか、本作品にはふたつの題名があって、そのいずれにも『アーサー王物語 / Arthurian Legend』を彩る女性の名前が掲げられています。

    本作品の所蔵先、テート・ギャラリー / Tate Galleryが示している『麗しきイゾルデ / La Belle Iseult』のイゾルデ / Isoldeとは、リヒャルト・ワーグナー / Richard Wagnerの楽劇 / Musikdrama『トリスタンとイゾルデ / Tristan und Isolde』によっても知られる女性です。彼女はマルク王 / Mark Of Cornwallの妃となるものの、ふたりの婚姻に尽力を尽くしたトリスタン / Tristanとの許されぬ悲恋に陥ってしまいます。

    もう一方の題名である『王妃グィネヴィア / Queen Guenevere』のグィネヴィア / Guinevereもまた同様です。アーサー王 / King Arthurの妻でありながら、その配下のランスロット / Sir Lancelotとのただならぬ悲恋に身を焦がすのです。

    通常の作品ならば、作品解説としてはここで終わりです。さもなければ、いずれの解釈が正しいのか、もしくは、その様な解釈を産み出した原因を探ります。
    だけれども、この作品に関しては、もっと別の視点があるのです。

    描かれた人物、モデルとなった女性はジェーン・モリス / Jane Burden Morris。画家の妻です。
    そして、そのジェーン・モリス / Jane Burden Morrisは夫の友人である画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ / Dante Gabriel Rossettiの幾つもの作品のモデルでもあります(その代表的な作品『プロセルピナ / Proserpine』はこちらで紹介済みです)。

    夫と妻との生活は愛がなきものとして今では知られており、その一方でもうひとりの画家とこのモデルとの間は並々ならぬ感情の交錯があったとされています。

    つまり、描かれた作品を離れて、この3者はあたかもマルク王 / Mark Of Cornwallとトリスタン / Tristanとイゾルデ / Isoldeの関係、もしくはアーサー王 / King Arthurとランスロット / Sir Lancelotとグィネヴィア / Guinevereとの関係に、匹敵する様な感情のもつれが存在していたと解釈する事が可能です。

    と、現在に棲むわたち達は想像を逞しくしていれば良いのですが、現実問題として、おのれの妻をイゾルデ / Isolde乃至はグィネヴィア / Guinevereとなぞらえて描く画家の心情はいかばかりのモノだったのでしょうか。
    勿論、それを知っている上で、そのモデルを引き受けた彼女の心象も、重苦しいばかりなのですが。

    下に掲載するのはガストン・ビュシエール / Gaston Bussiereによる『ケルトの王女(イゾルデ) / Femme a la Couronne: La Princesse Celte (Isolde)』。
    1911年の作品です。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 09:15 * comments(0) * trackbacks(0) * -

    スポンサーサイト

    0
      スポンサードリンク * - * 09:15 * - * - * -

      comments

      entry your comments









      trackbacks

      このページの先頭へ