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『老女(ラ・ヴェッキア)』 by ジョルジョーネ

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    窓枠? の向こうに佇む老女がひとり。その顔に顕れている老いは隠す事は出来ないが、彼女の心情は決して窺いしれない。そのふたつのまなこはどこを凝視めているのか、中途半端にあけられた口蓋から何を語ろうとしているのか、皆目検討もつかないのだ。もしかすると、彼女の内心は既にこの世にはないのかもしれない。そんな気さえするのである。
    そんなとき、観るモノのそんな途惑いを知ってか知らずか、彼女の右腕にある一文が雄弁に語り出すのである。


    作品名:老女(ラ・ヴェッキア)
        la Vecchia (Old Woman)
    画 家:ジョルジョーネ
        Giorgione
    美術館:アカデミア美術館イタリアヴェネツィア
        Gallerie dell'Accademia, Venezia, Repubblica Italiana


    1506年頃の作品。

    描かれた女性の携えている紙片が謎を呼びます。
    そこにはこう書かれてあるのです。

    時がたつにつれて / Col tempo?

    この一文をもって、様々な解釈が生まれます。
    人生の儚さ、虚栄(ヴァニタス) / Vanitasを描いた作品だ。では、このおんなは誰だ。
    画家の母親を描いた作品である。だとしたら、何故、自身の母親を描いたのか。
    画家の代表作『嵐(テンペスタ) / La Tempesta』に登場する女性の、その後を描いたモノだ。だとしたら、何故その女性のその後を描いたのか。
    謎は、謎を呼んでしまうばかりなのです。

    そんな議論が喧しいのは、画家の活動期間が極めて短く、そして、遺されたその作品もあまりに少ないからです。代表作である『嵐(テンペスタ) / La Tempesta』でさえも、様々な論議を呼んでいるのは既に、こちらで紹介済みです。

    そして、想うのですが、画家が活躍していたその時代、本作品の様に、名もなき市井の人物、それも老いた女性の肖像を描く事自体が珍しいから、なのではないでしょうか。
    ざっと、検索した結果だけでの印象ではあるのですが。
    勿論、当時の権力者やその伴侶(しかも老いた)を描いた肖像画は幾らでもあるでしょう。
    勿論、宗教画の様に、ひとつの作品に様々な階級、様々な年齢の男女が描かれている群像画ならば、その中のひとりとして老婆は登場しているのでしょう。
    ですが、... と謂う気がするのです。
    そしてそれが議論に拍車をかけているのではないでしょうか。

    ちなみに、画家と同時代人、と謂うよりも兄弟弟子であるかの様な交流があったティツィアーノ・ヴェチェッリオ / Tiziano Vecellioの作品群の中にも、こんな画題の作品は見受けられないのです(わたしの誤解であれば、ご指摘願います)。

    なので、下に紹介するのは、上の作品から約1世紀後、1610年頃の作品、オラツィオ・ボルジャンニ / Orazio Borgianniによる『ある老女の頭部 / Head of An Old Woman』(邦題は拙訳です)です。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 08:52 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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