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『仏手柑・ノジマ3(フィンガー・シュトロン(ノジマ)3)』 by 森村泰昌

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    木製の箱からのぞく1対のてのひら、まるでなにかをつつみこんでいる様な、ふしぎなふくらみがそこにはあるが、実際はまっくらな空間をかたちづくっているだけだ。
    そしてその脇には、ひだりのてのひら、かるくにぎりしめられているそのなかには一体、なにがかくされているのだろうか。


    作品名:仏手柑・ノジマ3(フィンガー・シュトロン(ノジマ)3)
        Fingered Citrons (Nojima) 3
    画 家:森村泰昌
        Yasumasa Morimura
    美術館:京都国立近代美術館京都府京都市
        
    The National Museum Of Modern Art, KyotoKyoto City, Kyoto Prefecture

    1990年の作品。

    この作品は画家の著書のひとつである『美術の解剖学講義 / The Lecture Of Anatomy For Art』(大昔にこちらで紹介しました)に掲載されています。
    それをみて、この画家の初期は、いたって真面目な作品を創っていたんだなぁと思ったのです。と、謂うのは、この画家の作品の幾つかは、泰西名画のパロディの様な様相を呈していて、画家自身はまるでコスプレイヤーの様に、その作品に登場しているのですから。

    でも、じっくりとみると、この作品、とても不思議です。
    第一に、わたしは、作品名に踊る「仏手柑 / Fingered Citrons」と謂う語句も「ノジマ / Nojima」と謂う語句の、意味するところも、解らない。

    こういう場合、画家の著した書物の中で、自解や自註が綴られている筈なのですが、それに該当する言葉は、次の1文だけです。

    「<前略>小さい手と大きい鼻という、いわば私にとっての壁は、壁であったがゆえにトンチによる不思議な飛躍を呼び寄せたのでした(図4)。」(『美術の解剖学講義 / The Lecture Of Anatomy For Art』より)

    上記引用文にある図4が本作です。
    そして、本作を参照作品としているその1文の、直前に綴られているのは、画家自身の彼の容姿に対するコンプレックスです。つまり、彼の彼による「小さい手と大きい鼻」に関する独白なのです。

    何故、この作品が画家の容姿と関連づけられるのか。
    少なくとも、その作品に登場するみっつのてのひらは、画家自身のモノであろうと謂う事だけは推測出来るのではありますが。

    この作品を紹介するにあたり、一体、どうしたモノかなぁと悩みつつ、検索すると総てが氷解します。

    作品名にある「仏手柑 / Fingered Citrons」とは果実のひとつ、仏手柑 / Buddha's Handの事です。
    同じく「ノジマ / Nojima」とは、写真家の野島康三 / Yasuzo Nojimaの事です。
    そして、野島康三 / Yasuzo Nojimaは果実の仏手柑 / Buddha's Handを素材とした写真作品『仏手柑 / Busshukan (Fingered Citrons)』(1930年の作)を遺しているのです。

    仏手柑 / Buddha's Handがその名にあるとおり、仏陀 / Buddhaのてのひらの様な形態である事を鑑み、画家は、野島康三 / Yasuzo Nojima作品に撮影されている仏手柑 / Buddha's Handの様相を真似た、自身のてのひらを素材とした作品を発表したのです。

    と、謂う事は、画家の作品のひとつの傾向である、泰西名画のパロディじみた作品群と、発想の根幹は共通しているのです。彼はその当時から一貫し、作品に対するアプローチの方法論はその頃に既に完成していたのです。

    下に掲載するのは小林古径 / Kokei Kobayashiによる『仏手柑 / Horned Oranges』。1938年の作品です。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 08:15 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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