<< February 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 >>
<< 短歌:冬ナノニ詠メル | main | 詩『無題といふ題:A Title, Untitled』 >>

『聖アントニウスの誘惑』 by ポール・デルヴォー

0
    永遠につづくかと思われる回廊を数名の裸女が彷徨い、そして落ち合う。彼女達の会話に登場するのは、勿論、あの人物の事であろう。彼を籠絡しようというのか、彼を嘲笑しようというのか、彼を陥落しようというのか、ことばはいくらでもあふれる。めぐらすかんがえはいくらでもかたられるのだ。なぜならば、よるはながく、彼女達にあたえられた時間は無限のものともおもわれるのだから。


    作品名:聖アントニウスの誘惑
        The Temptation Of Saint Anthony
    画 家:ポール・デルヴォー
        Paul Delvaux
    美術館:個人蔵
        Private Collection


    1946年の事です。
    ギ・ド・モーパッサン / Guy de Maupassantの小説『ベラミ / Bel-ami』の映画化に際し、その作品内に登場する絵画作品『聖アントニウスの誘惑 / The Temptation Of St. Anthony』の公募が開催されました。
    映画がクランク・インするまでに90×120 cm程度の作品を完成させるのです。1等賞金2,500ドル、参加者全員に500ドルが支払われます。このコンクールに12人の画家が参加し、1人を除き11作品が期日までに完成します。
    作品の審査にはマルセル・デュシャン / Marcel Duchampらがあたり、その結果、マックス・エルンスト / Max Ernstの『聖アントニウスの誘惑 / The Temptation Of St. Anthony』(こちらで紹介済み)が当選します。

    ギ・ド・モーパッサン / Guy de Maupassantの小説『ベラミ / Bel-ami』の映画化作品『ベラミの私事 / The Private Affairs Of Bel Ami』(アルバート・リューイン / Albert Lewin監督作品)は翌1947年に公開され、マックス・エルンスト / Max Ernstの『聖アントニウスの誘惑 / The Temptation Of St. Anthony』もそのワン・シーンを飾った筈です。しかしながら、興行的には完全に失敗に終わり、映画『ベラミの私事 / The Private Affairs Of Bel Ami』(アルバート・リューイン / Albert Lewin監督作品)は完全に忘れ去られたかたちとなっています。

    その一方で、その映画の為に行われた絵画の公募は未だに議論の的となっているのです。

    サルバドール・ダリ / Salvador Daliの『聖アントニウスの誘惑 / La tentation de Saint-Antoine』をこちらで紹介した際に、ここまでは既に記述しております。殆ど、コピー・アンド・ペーストなのです。

    そして、次席2等入選作品はイヴァン・オルブライト / Ivan Albrightの『聖アントニウスの誘惑 / The Temptation Of St. Anthony』(こちらで紹介済み)であり、本作品は3等入選作品であります。

    本作が当選作品や次席作品と異なるのは、表題にもある聖アントニウス / Antoniusが画面上に一切、登場していない事です。その結果、題名を読んで本作品を眺めると不思議な感慨に囚われます。なぜならば、本作品のどこにも、誘惑 / Temptationと謂う語句すら存在する気配はないのですから。
    ここにあるのは、裸の女性と回廊と夜、ただそれだけで、それは画家独特の世界観だけが呈示されているのです。

    しかし、気になる女性がひとり、います。
    画面中央の中景にいる、跪く女性です。まるで、そこに置かれているなにかを開けて、そのなかをまさぐっている様に思えます。

    思い出すのはティツィアーノ・ヴェチェッリオ / Tiziano Vecellioの『ウルビーノのヴィーナス / Venere d'Urbino』(こちらで紹介済み)です。あの作品の中にも、彼女と同じ様な姿勢と仕草の女性が登場します。
    もしかしたら、本作品のその女性は、あの作品の女性と同一人物なのかもしれません。いや、同一人物ではなくとも、あの作品の女性と同じ様な役割を本作品のその女性もはたしているのではないでしょうか。

    つまり、本作品の女性の背後は寝室であり、あの作品の様に裸体の女性が横臥していて、聖アントニウス / Antoniusを待っているのではないか、そう思うのです。
    いや、もしかしたら、待っているどころではない、題名にある誘惑 / Temptationが裸体の女性によって聖アントニウス / Antoniusに対してなされているのではないでしょうか。

    下に掲載するのはパルマ・イル・ジョーヴァネ / Palma Giovaneによる『マルスとヴィーナス / Mars And Venus』。1590年頃の作品です。
    上の作品の、その寝室ではきっとこんな事がなされているのでは、と妄想を逞しくしてみました。尤も、この作品の主題は、ギリシア神話 / Greek Mythologyに於けるアレス / Aresアフロディテ / Aphroditeの逢瀬なのですが。


    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 09:14 * comments(0) * trackbacks(0) * -

    スポンサーサイト

    0
      スポンサードリンク * - * 09:14 * - * - * -

      comments

      entry your comments









      trackbacks

      このページの先頭へ