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『ダナエ』 by グスタフ・クリムト

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    画面一杯に全裸で横たわる女性が描かれている。というよりもその豊満な身体を半ば無理矢理押し込む様に、狭い寝床に、その女性は眠っている。まるで胎児の様に。己の、これから来るであろう宿命を知らず、彼女は眠り続けている。その女性に今、金色の雨が降り注ごうとしている。


    作品名:ダナエ
        Danae
    画 家:グスタフ・クリムト
        Gustav Klimt
    美術館:個人蔵 / Private collection


    この作品の主人公ダナエ / Danaeは、ギリシャ神話 / Greek Mythに登場する王女で、大神ゼウス / Zeusに愛されて英雄ペルセウス / Perseusの母となる女性です。
    汝に、息子は生まれない。しかし、汝には男の孫が生まれる。汝はその孫に殺されるだろう」という予言の成就を避ける為に、父は一人娘の彼女を幽閉します。しかし、その幽閉された彼女の許に、大神が出現して関係を持ち、後の英雄となる幼児を孕ませてしまいます。
    そして、この作品は、幽閉された彼女の許に、大神が黄金の雨と化して出現するシーンを描いたものです。

    ところで、奸計によって幽閉された女性を男性が救い、その愛を見事に射止めてしまう、そんなお話はたくさんありますよね?
    例えば、『ラプンツェル / Rapunzel』や、『眠れる森の美女 / Sleeping Beauty』や、それに、幽閉されているわけではないけれども、生来からの盲目の少女とその下男の愛を描いた、谷崎潤一郎 / Junichiro Tanizakiの『春琴抄 / A Portrait of Shunkin』とか。
    また、眠っている間に、靴が出来上がってしまうという『小人の靴屋さん』も、眠っている間に性転換しちゃう『オーランド− / Orlando: A Biography』も、もしかしたら、ここから派生したものかもしれません。

    幽閉した張本人の視点で観れば、己の預かり知らないところでナニモノかが成就してしまう、もしくは、大事に隠しておいたモノが盗まれてしまう物語です。一方の幽閉されたモノの視点で観れば、己の苦難や危機的な状況から救い出してくれる白馬の王子様を待ち望む物語です。そして、さらに盗むモノの視点で観れば、「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」という銭形警部の発言の様な物語が産まれます。

    それでは、この作品は誰の視点で描かれているのでしょう。
    狭い窮屈な居室に閉じ込められた王女を、こっそりと覗き観している作品の様に観えます。視点は、あくまでも視姦者 / 窃視者のものです。この作品を覗き観るモノは、これから起こるであろう秘め事に驚愕せざるを得ないでしょう。
    でも、わたし自身のイメージで言えば、陶然とした表情で睡眠を貪る様に眠っている様に観える、この乙女が、何かを待ち望んでいる様に観えて仕方ありません。彼女は、いずれ己の胎内に宿す事になる胎児と同じ姿勢をして、その児をもたらせてくれるナニモノかを、今か今かと待ち構えているのです。

    ティツィアーノ・ヴェチェリオ / Tiziano Vecellioの作品に、ダナエ / Danaeの許に黄金の雨が降りかかろうとしている作品『ダナエ / Danae』があるので、それもあわせて御覧下さい。

    るい rui, the creature 4 =OyO= * criticism : art * 16:58 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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