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詩『海の掌:hand in the deep sea』

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    そこだけがぼぉっと蒼く明るく輝いている
    掌を伸ばせばそれに触れられる、
    そんな幻想を抱かせるのも
    そこは冬の水族館だからだ

    わたしの眼前で、
    大きな紅い触手を幾重にも波打たせているのは
    巨きな岩肌の様な磯巾着と、そして
    ゆらりゆらりと揺れる触手に包み込まれて
    平穏な時の流れに身を任せるちいさなさかな達
    橙と黒の縦縞が美しく踊る

    あの時のあなたの掌が嬉しかった
    その後、何度となく触れる事になる
    あなたの腕やあなたの頬、あなたの背中やあなたの唇
    それでも、あの時のあなたの掌が愛おしい

    冷たいガラスの壁面に触れたわたしの掌は
    あの時の感触を思い出している

    恐る恐る触れる指先に滑り込む様に包み込むあなたの掌
    わたしはその様を凝視めているしかなかったけれども
    あなたの視線は感じられていた
    信じてもいいと思ったのは、
    その視線の柔らかさかもしれない

    ふと思ったのは、
    紅い触手に触れられて
    恍惚の表情を浮かべながら死に至る
    愚かな生贄達のこと
    わたしに相応しいのは、むしろ
    そちらではないのだろうか

    あのちいさなさかな達は、
    巨きな磯巾着の存在を確かめられない
    何故なら、彼らは触手に込められた毒を感じないから
    毒に包まれる一瞬の至福を感じる事がないから

    すっぽりと包み込まれた指先の感触で一杯になって
    わたしは、ぐいと腕を引き込まれた
    それから後の事は、今はもう思い出せない


    反歌:主人なき 枕観る夢は 海の涯 冬の灯も 消えゆかんとす
    るい rui, the creature 4 =OyO= * poetry : sonnet * 11:28 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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