『忘れえぬ女(見知らぬ女性)』 by イワン・クラムスコイ
2007.12.16 Sunday
作品名:忘れえぬ女(見知らぬ女性)
Неизвестная / Neizvestnaya
画 家:イワン・クラムスコイ
Ivan Nikolaevich Kramskoi
美術館:トレチャコフ美術館/ロシア、モスクワ
The Tretyakov Gallery, Moscow, Rossiyskaya Federatsiya
オリジナルのロシア語の題名は『Неизвестная / Neizvestnaya』といって、どこの誰とも解らない「見知らぬ女性」という意味です。ところが、この作品を日本では原義通りの「見知らぬ女性」というタイトルの他にもうひとつ、別のタイトルが存在します。
『忘れえぬ女(ひと)』
「見知らぬ女性」と「忘れえぬ女」では、日本語としては大きな隔たりがあります。しかし、これは誤訳というよりも、作品に描かれた女性の表情の、解釈の違いから生じたのではないでしょうか?
明らかに車上のその女性は、わたしたちを見下ろしています。黒い衣服に身を包んだ彼女の表情からは、様々なものを読み取る事が出来ます。"上から目線"だから、一見、尊大とも傲慢とも解読出来ます。また、その一方で、憂いに満ちた表情にも悲しみをたたえた表情にも読めます。
この女性と、彼女を仰ぎ観るものとの関係はどの様なものだったのでしょうか? 街中の大通りでのほんの一瞬の邂逅とも想えますし、恋人との別れの場面にも想えます。
そしてまた、"一瞬の邂逅"だからこその「見知らぬ女性」と呼ぶ事も出来ますし、逆にまた"一瞬の邂逅"だからこそ強く印象づけられた女性の面影、「忘れえぬ女」という解釈もあり得ます。
勿論、"別れの場面"ならばこそ、その別れ方に悲劇的な彩りが加えられているのならばなおさらの事、元恋人はその女性を「見知らぬ女性」とも「忘れえぬ女」とも呼ぶことになります。
ところで、この様な題名の誤読?は、日本だけかしらと想ったら、本国ロシア / Rossiyskaya Federatsiyaでも同じ様な現象があるそうです。正式なタイトルはロシア語で「ニェイズスナヤ(Неизвестная)」と読むそうですが、ヒトによっては「ニェイズナコムカ(Незнакомка)」とも呼ぶそうです。意味的にはどちらも「見知らぬ女性」となるそうですが、「ニェイズナコムカ(Незнакомка)」はロシアの象徴派詩人アレクサンドル・アレクサーンドロヴィチ・ブローク / Aleksandr Aleksandrovich Blokの詩『Незнакомка/ Unknown Woman』のタイトルです。
この詩で描かれた女性のイメージが、この絵画作品を観るものの、女性像に投影されているのではないかとの事です。
ちなみに下に掲載した作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチ / Leonardo da Vinciによる『ミラノの宮廷婦人の肖像』こと『Portrait Of An Unknown Woman』。ただし、この場合の"Unknown"は、"名もなき"とか"(人物を特定出来ない)無名の"という様な意味合いだと想われます。
Неизвестная / Neizvestnaya
画 家:イワン・クラムスコイ
Ivan Nikolaevich Kramskoi
美術館:トレチャコフ美術館/ロシア、モスクワ
The Tretyakov Gallery, Moscow, Rossiyskaya Federatsiya
オリジナルのロシア語の題名は『Неизвестная / Neizvestnaya』といって、どこの誰とも解らない「見知らぬ女性」という意味です。ところが、この作品を日本では原義通りの「見知らぬ女性」というタイトルの他にもうひとつ、別のタイトルが存在します。
『忘れえぬ女(ひと)』
「見知らぬ女性」と「忘れえぬ女」では、日本語としては大きな隔たりがあります。しかし、これは誤訳というよりも、作品に描かれた女性の表情の、解釈の違いから生じたのではないでしょうか?
明らかに車上のその女性は、わたしたちを見下ろしています。黒い衣服に身を包んだ彼女の表情からは、様々なものを読み取る事が出来ます。"上から目線"だから、一見、尊大とも傲慢とも解読出来ます。また、その一方で、憂いに満ちた表情にも悲しみをたたえた表情にも読めます。
この女性と、彼女を仰ぎ観るものとの関係はどの様なものだったのでしょうか? 街中の大通りでのほんの一瞬の邂逅とも想えますし、恋人との別れの場面にも想えます。
そしてまた、"一瞬の邂逅"だからこその「見知らぬ女性」と呼ぶ事も出来ますし、逆にまた"一瞬の邂逅"だからこそ強く印象づけられた女性の面影、「忘れえぬ女」という解釈もあり得ます。
勿論、"別れの場面"ならばこそ、その別れ方に悲劇的な彩りが加えられているのならばなおさらの事、元恋人はその女性を「見知らぬ女性」とも「忘れえぬ女」とも呼ぶことになります。
ところで、この様な題名の誤読?は、日本だけかしらと想ったら、本国ロシア / Rossiyskaya Federatsiyaでも同じ様な現象があるそうです。正式なタイトルはロシア語で「ニェイズスナヤ(Неизвестная)」と読むそうですが、ヒトによっては「ニェイズナコムカ(Незнакомка)」とも呼ぶそうです。意味的にはどちらも「見知らぬ女性」となるそうですが、「ニェイズナコムカ(Незнакомка)」はロシアの象徴派詩人アレクサンドル・アレクサーンドロヴィチ・ブローク / Aleksandr Aleksandrovich Blokの詩『Незнакомка/ Unknown Woman』のタイトルです。
この詩で描かれた女性のイメージが、この絵画作品を観るものの、女性像に投影されているのではないかとの事です。
ちなみに下に掲載した作品は、レオナルド・ダ・ヴィンチ / Leonardo da Vinciによる『ミラノの宮廷婦人の肖像』こと『Portrait Of An Unknown Woman』。ただし、この場合の"Unknown"は、"名もなき"とか"(人物を特定出来ない)無名の"という様な意味合いだと想われます。