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ばるんが vol.04.

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    季節はめぐって、あの気狂いぢみた暑さはウソの様にひいやりとした空気が街を支配している。でも、ちょっとここでは時計の針を逆廻し。あの日の暑さを思い出せるように。

    10日間続いた曇り空もやっと幕引き。久しぶりに朝日が登るのを待つ。新宿の高層ビルの一角で、乱反射している、その光を和らげる様に淡い朝露が路面を濡らす。

    信号が変わる。和やかな空気が次第次第に殺気立ってくる。日常が否応なく押し寄せてくる。でも、ちょっとここでは時計の針を逆廻し。あの日のあなたを思い出せるように。
    そして、わたしは彼に案内されるまま、図書館のとなりにある大きな建物に連れて行かれた。ここでも彼は言い訳じみた長広舌を広げる。
    ここがどこだかわかるかい?この大きな4階立ての建物、これ全部が学食さ。そうだな、君はここに座って待ってて、ちょっと行ってくるから。
    わたしは、おおきなテーブルのはしっこに否応なく座らされて独り荷物番。
    彼は小走りにキャッシャーと思しきカウンターに向かって行く。食器を乗せたトレーで両手を塞がれた学生さん達が右往左往している。あっちのテーブルでは、数人の男子が激しく口論しているみたいだし、こっちのテーブルでは中年のおじさん(教授センセイかしら)が独りもくもくと定食を頂いている。そんなこんなで彼が茶色いトレーを抱えてやってくる。
    アイスコーヒーでよかったかな?どっちがいい?と彼が差し出すトレーには、コーヒーカップふたつにチーズケーキとストロベリーショートがひと皿ずつ。

    わたしの背後でおおきな嬌声が聞こえる。びっくりして振り返ると、数列後ろのテーブルで学生さん達が大騒ぎしている。
    部室のないサークルや同好会は、ここがたまり場なんだ。誰かしらが席番してたりして、なんとなく暗黙の了解で場所が決まっているんだよ。
    彼はバツの悪そうななんとも言えない表情でわたしを見つめる。だから、わたしもおつき合い。彼の顔まねして、コーヒーをすする。
    彼の左手がぐんと伸びて、これまでテーブルの端に押しやられた灰皿を手許に引き寄せる。直輸入のビスケットケースのような大きなその灰皿にはうずたかく、吸い殻が積もっている。

    で、きみはどう思う?どうって?あのゴヤの『巨人』さ。あの絵にはふたつの解釈があると、あの本にはあったよね。あなたのばるんがもそのどちらかなの?たぶん、ちがう。あれにはあの巨人がもつ強い意志のようなものはないんぢゃあないかな?ぢゃあ、なんでわたしに見せたの?つまり、おおきさだよ、ぼくの、いやぼくのぢゃないけど、そのばるんががどんだけおおきなやつなのか、それを知ってほしかったんだ。

    ほんの一瞬、沈黙が支配する。学食の喧噪はさっきより増している。きっと授業が終わった頃合なんだろう。

    わかったわ。捜しに行きましょう、あなたのばるんがを。そのときのわたしに具体的なアイデアがあったかどうか、それはわからない。きっとなにもなかったんだろう。一体、どこへ?うろたえる彼の問いに対しての回答がこうだった。
    まずはさっきの図書館。







    るい rui, the creature 4 =OyO= * works : balloon-god * 18:29 * comments(0) * trackbacks(0) * -

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