この物語に悪人は登場しない。
登場人物のすべてが、自らの意思に関わらないところで誕生し、己の生を全うせざるを得ない。英語で言えば「i was born」受動態だよね。産まれるという事はそういう事。この物語の登場人物すべてが己の出自を呪い、その出自から解放される事だけを願って戦う。
本来ならば悪役である筈の、 延命を乞い願う年老いた権力者も、立場は同じ「やっとここまで辿り着いたのに、何故、ここで死ななければならないんだ」。だから、実の親子ですら互いに血を流しあう。
何故、わたしたちはここに産まれて来たのか、そして、どこへゆこうとしているのか。
この映画は、それに対して具体的な答えを提示する事なく終わる。それが、作品の評価が別れる所以かもしれない。
もっと力強く「愛するものの為に」戦うと、断定してくれればよかったのにとも思った。