その美しいひとは 一糸も纏わずに 身を横たえている
黒い革張りのベッド 薄絹のようなレースのカーテン
額に滲む汗は 何を望む?
空は照り続ける太陽 白い壁には影すらもみえない
閉じられた黒い瞳 寝息をたてる小鼻の稜線
ほんのりと 紅く輝く唇から発せられるのは誰の名前か
止まってしまった時間を切裂く様に サイレンが鳴り響く
燃える 焼ける ー 終え尽きて 焼け落ちる
人々はなす術もなく 己の恋しいヒトの名を叫ぶだけ
燃え広がる炎は 皆の想いを焼き尽す
ゆったりと双丘は 息づいて
伸びやかに伸ばされた右腕は 虚空を彷徨う
その美しいひとは 一糸も纏わずに 身を横たえている
黒い叢に匿された 泪のしずくは何処かへと流れ
刻む時計は いつ響く?
空は紅くゆらめいて輝き 暗い影だけがまっすぐに伸びて行く
反歌:身を屈め 拾いて凝視める 蝉の翅 君が友の音 未だ鳴り止まじ