信号待ちしているわたしのめのまえをあなたが駆けていく
歩行者用信号が点滅し、
道路におおきく身を乗り出している信号の色が変わる瞬間に
あなたはいつもの自転車で、すごいスピードで駆け抜けていく
わたしがあなたに気づいたときは、もう背中しかみえない
なぜ、気づかなかったのだろう
なぜ、声をかけなかったのだろう
そんな念いに囚われるのは、もっと後になってからのことで
ヒトやクルマの陰に隠れてしまって、
見失ってしまうあなたの背中だけを、眼だけが追い続けていた
あれはいつの日のことだろう?
前を歩くあなたを、自転車にまたがったわたしが追い抜いたのは
追い抜いたわたしの名前を大きな声で、呼び止めようとしたのは
最初から気がついていたけれども、知らんぷりして走り抜けたのは
その日は太陽が輝いていた
街の木立の緑がまぶしかった
今は季節外れにも、雨がふっている