白いシーツにくるまれて眠っている、あなたの顔を今夜も観ている
暗い伽藍堂の様なこの部屋の中にふたり
橙色のちいさな灯だけに照らされて、ふたり
あなたに溺れる夢を観た あなたに掬われる夢を観た
遠くの路でサイレンが鳴り響く
わたしの鼓膜を右から左へと疾りぬける
街の喧噪から逃れてふたり、
あなたの吐息と溜息をつくわたし
ベッドをそっと抜け出して窓に辿り着く
冬のカーテンを静かに開けると、結露のガラスが眼にはいる
指で触れると水滴がそこだけ蟲の様に、真逆様に逃げてゆく
その濡れた指で頬に触れる
渇いた唇がその指を欲している
窓の外は外灯でほんのりと明るく、
西の空はイルミネーションが眩しい
I'm dreaming of a white Christmas.
白いシーツにくるまれて眠っている、あなたの顔を想い出している
窓から零れる灯に沈むこの部屋の中にひとり
橙色に代わって、冷たい灯に照らされて、ひとり
あなたを嚥下む夢を観た あなたを喰尽らげる夢を観た
一年前はあの西の空の下で、あなたと一緒だった
幼く若く生意気で向こう見ずなふたり、
寒空の下、街の喧騒と共にいきていた
サイレンの音こそがBGMだった
蟲達が遺した惨めな痕が、窓ガラスに幾筋も遺されている
それでも、次から次へと揺籃した新しい蟲の卵が
産まれ生づるその刻を待っている ガラスは一瞬で露に被われる
渇いた唇から紅黒い舌を這いだして
冷気と冬の闇に想いを馳せながら、産まれたばかりの卵を嚥下む
ガラスに触れた頬を幾筋も、幾筋も、結露が真逆様に逃げてゆく
I'm dreaming of a white Christmas.
反歌:祝祭の 灯の裏に 潜む闇 その巨きさに 怯ゆるばかり