陸に揚がったさかなの数をかぞえている
毎日毎朝 決まった時間に
来る日も逝く日も毎朝毎日
それがこの地にうまれて以来、わたしの仕事となっている
愚かな領主は言う それが死んでしまったものへの慰みだ
かぞえあげられたさかなに名を与えているのが彼だ
毎日毎夕 決まった時間に
逝く日も来る日も毎夕毎日
その日にうまれたみどりごに、名を与え終えたその後に
その日、その朝、いつものように数をかぞえているその時に
母が身罷った
さかなのうろこだらけの両腕で、彼女を抱いてないたから
柔肌のなかにうまるそれは わたしのもの わたしのうろこと化してしまう
愚かな領主は言うだろう それが死んでしまったものからの戒めだ
その日、その夜、つつましやかに葬儀がおわったその晩に
わたしは身籠った
さかなのうろこだらけの両腕で、彼女を荼毘にふしたから
銀鱗のなかにうまれるそれは わたしのもの わたしが孕んだみどりごだ
そのときから、わたしにあらたな日課がくわわることとなる
岸辺の果てで、わたしは孕んだたまごをうみへとはなつ
毎日毎夜 決まった時間に
逝く日も来る日も毎夜毎日
しろくてちいさないくつものそれらを 一晩かけて
愚かな領主はもう言わない その日以来、ことばを喪った彼だから
いまでも、陸に揚がったさかなの数をかぞえている
毎日毎朝 決まった時間に
来る日も逝く日も毎朝毎日
二度とは逢えないとしりながら