つけっぱなしにしているラジオの向こうから流れてくるのは
あまりにも楽観的な恋の唄 しんじるきみをしんじるのだ、と
身勝手に責任をわたしにおしつけるそのあまりなやりかたはだれかににている
書きあぐんでいるわたしの手許からふいにノートをとりあげるとなりの席のきみ
傍若無人にあっけにとられているわたしには一切のおかまいもない ただ
戻されたノートにはいくつもの朱があるが、それらが必ずしもただしいわけではない
魔法とは、そのいずれでもないもの
だけれども、みぎへひだりへ ふりきったメーターのふたつのあいだにそれはある
唱える呪文も屠る生贄も忘れて、ふたつがしめすそのあいだへと歩むことなのだ
だからその日その時 語ったきみのその台詞をそのまま書きつけておこう
決してだれも解決法を教えてくれないのならば いにしえのそれをさがすのさ
ぼくたちがまだけだものだったときの記憶 その神秘に触れる必要があるのだ
たとえそれがまやかしであろうとも たとえそれがまじないであろうとも
いいかい 末尾にKと綴るのは、それを憶いだすため 最初の方法なのだ