うしなうのはだれも、ひだりだ
あいてしまったおおきなあなをそのままにみせびらかせているもの
黒い布をあてがい無表情を演出するもの
きらびやかな模造品ではなやかにいろどるもの
ひとそれぞれに装っているが、うしなった事実はかわらない
そうしてだれも、みたくないものをみぬよろこびにうつつをぬかす
わたしの掌のなかにもころん、だれかのなくしたものがひとつある
風がにしからひがしへとそよぎ みなみのうみはまっさおだ
いつもは髪でかくしたひだりの頬も、夏の陽射しをまっこうからあびている
だれかのうせものはおもいっきりとおくへなげすてて 葬儀はこれでおしまい
いつかはおのれがうまれたふるさとにたどりつくだろう
あおむけになっていま わたしは背にしろいはまの熱気をかんじている
にぎったすなをさらさらと、わたしの空洞にそそいでいる
あなはおもった以上におおきくてふかく いつまでもいつまでものみこんでゆく